多大な借金を抱え、返済する術もなくなって夜逃げを考えている方もいるかもしれません。
「夜逃げをすれば債権者からの取り立てもなくなり、平穏無事に暮らせるのでは」
と淡い期待を抱いているかもしれませんが、残念ながら夜逃げをしても、安心して暮らせる状況はいつまで経っても生まれません。
このページでは、夜逃げをするとどうなるか具体的に解説します。
ぜひこれを見て夜逃げすることを思いとどまってください。
夜逃げとは?すべてを捨てて逃亡すること
夜逃げとは周囲に知らせず、こっそりと夜中に引越しをすることです。
白昼堂々と引っ越す場合でも、周りに知らせなければ夜逃げと同じ意味合いになります。
夜逃げは引っ越し業者を呼んで行う人はほとんどいません。
家財道具などはそのまま置いていき、貴重品だけを身に付けて姿をくらますというのが一般的です。
債権者から逃れるのが一番の目的なので、引っ越す雰囲気を匂わさずに夜逃げをするのが普通です。
悲惨すぎる夜逃げで被る損害・デメリット
夜逃げをして取り巻く状況を一時的に回避できても、以下のような弊害があるので普通の生活を続けることは不可能です。
住民票を移すことも事実上不可能ですし、平穏無事な暮らしを求めるのは難しいです。
- 住民票を出せない、住所を移せないことによる弊害が大きすぎる
- 居場所を知られないようにするため、親戚・知人とも縁を切る必要がある
- 見つかると遅延損害金が加算される
- 居場所を突き止められる恐怖に常に怯えないといけない
1.住民票を出せない、住所を移せないことによる弊害が大きすぎる
夜逃げ自体は法律違反ではないので住民票を移すことはできますが、債権者は所定の手続きを行うことであなたの住民票を閲覧できる場合があります。
そのため、夜逃げをした場合は住民票を次の住む場所に移すことは難しいでしょう。
具体的には以下のような弊害があります。
社会保障が受けられないことがある
自治体のサービスは基本的に住民票のあるところで受けるものです。
そのため、きちんと手続きをしていれば受けられるはずのサービスが利用できなくなります。
たとえば小さな子どもがいる場合は医療費の助成が受けられますが、これは住民票のある自治体でないと受けられませんし、利用できる医療機関もその自治体にあるものかその周辺だけが対象なので実質的に利用できないでしょう。
また健康保険や年金、生活保護などの手続きも夜逃げ先の自治体では手続きができなくなります。
運転免許証の更新が夜逃げ先の都道府県でできない
運転免許証の更新は原則として住民票のある都道府県で行うので、県外に夜逃げしたときは住民票のあるところで手続きをすることが必要になります。
ただし、優良運転者なら住民票のないところで手続きをすることが可能です。
なお、更新のときは更新を知らせるハガキが届きますが、夜逃げした場合は自宅に送られてきません。ただしハガキはなくても手続きはできます。
パスポートの更新が面倒
夜逃げ先でもパスポートの更新(有効期限後の新規申請)を住民票のある住所で行わない場合は、6カ月以内に発行された住民票が必要になります。
2.居場所を知られないようにするため、親戚・知人とも縁を切る必要がある
夜逃げを成功させるためには情報が周りに出回らないことが重要なので、夜逃げをする場合は近所の人はもちろんのこと、親戚や知人でさえも伝えない方が良いです。
この人なら大丈夫だろうと思って話しても、その人が何かのきっかけでうっかり話してしまう可能性があります。
そのため、親戚や知人と縁を切ることが必要になります。
3.見つかると遅延損害金が加算される
夜逃げをしても債権者に見つかってしまったら、利息のほかに遅延損害金を請求されてしまいます。
遅延損害金とは、借金の返済が遅れたことが原因で債権者がこうむった損害として請求されるお金のことで、金利とは別に請求されるものです。
元本と金利だけでも支払えないから夜逃げをしているのに、さらに遅延損害金まで上乗せされてしまうということです。
遅延損害金は相手が貸金業者なら最高で20%まで法律で認められているので、見つかればかなり重い負担になります。
4.居場所を突き止められる恐怖に常に怯えないといけない
夜逃げをすれば、一時はその場から逃れられてホッとした気持ちになるかもしれません。
しかし、そういった気持ちが生まれるのはほんのつかの間です。
しばらくすれば、また借金の取り立てがすぐ近くまで忍び寄っているのではないかという恐怖におびえながら生活することになります。
実際、夜逃げしてしまったから諦めようなどと考える金融業者はいません。
探偵事務所や夜逃げ追跡専門業者に依頼して、あなたの場所をつきとめようとしていることもあります。
夜逃げすることで、借金の時効は成立するのか?
結論から言うと、債権者が時効を中断させる手続きをすれば時効は成立しません。
そのため、夜逃げをしても借金が消えることはないと考えてください。
消滅時効とは
夜逃げをする人は債権者から一定の期間、逃げ切れば「時効」が成立して返済義務がなくなると考えているのではないでしょうか。
しかし、よほど金額が少額でない限り、債権者が何もしないで放置することはないでしょう。
たとえ債務者が夜逃げをして行方をくらましていても時効は中断させることが可能だからです。
借金の消滅時効の期間と起算点
消滅時効が成立する期間は5年または10年です。
債権者または債務者のいずれかが商人なら5年となります。
住宅ローンの場合、住宅金融支援機構が債権者だと商人にあたらないので10年です。
なお、5年または10年という期間がカウントされるのは、支払期日または最後の弁済があった日です。
基本的には債務の返済日になって初めて支払いの請求ができるので、その日が起算日になります。
債権者が裁判で申立すると、時効が中断される
時効を中断させる手続きにはいくつかありますが、債務者が夜逃げをしていても「裁判上の請求」を債権者が行うことで時効を中断することが可能です。
なお、「中断」とはそこでとまるという意味ではなく、それまで経過した日数がリセットされるという意味です。
そのため、夜逃げをして姿をくらましていても、債権者が適切な対応をする限り借金はなくなりません。
夜逃げする前に知っておきたい、借金の事実
夜逃げという判断をする前に、借金の返済についてルールを把握しておきましょう。
ルールを知れば、そこまで恐れる必要がないことがわかるはずです。
- 違法な取り立ては法律で禁止されているので、過度に怯える必要はない
- 法的な手続きを踏めば、夜逃げせずに借金は減らせる
- 闇金など違法業者からの取り立てはそもそも返済義務がない
1.違法な取り立ては法律で禁止されているので、過度に怯える必要はない
借りた相手が貸金業者の場合は貸金業法(貸金業規制法)という法律で取り立てのルールが定められています。
たとえば正当な理由がなく21時~翌8時の間に自宅を訪問したり、電話をかけたりすることは禁じられています。
また、債務者の勤務先を訪問したり電話をかけたりすることはすべての時間帯で禁じられています。
基本的にかかってきた電話に応対していれば自宅に取り立てが来ることはないので、過度におびえる必要はありません。
2.法的な手続きを踏めば、夜逃げせずに借金は減らせる
民事再生(個人再生)や任意整理、自己破産といった債務整理の手続きを行えば、借金を減らして生活を再建することが可能です。
すでに説明したように、夜逃げしても借金がなくなるわけではありません。
ずっと逃げ続ければ精神的な負担になりますし、逃げ切れるわけではありませんので、夜逃げするくらいならこうした手続を検討しましょう。
弁護士や司法書士、貸金業協会などで無料相談を行っていますので、悩んでいるならこうしたところへなるべく早く相談に行きましょう。
3.闇金など違法業者からの取り立てはそもそも返済義務がない
闇金から借金をしている場合、利息制限法に定められた上限金利をはるかに超える利息を請求されていることがあります。
利息制限法の上限は年20%ですが、闇金では10日で1割といった法外な金利を請求してきます。
こうした利息を支払う義務はありませんし、すでに支払っていても過払い金請求という手続きで取り戻すことができます。
まとめ:夜逃げで心の安定は得られない。借金から開放されたいなら、正式な手続きを踏むこと
夜逃げをしても借金の返済義務はなくなりませんし、たとえ一時的に逃げることができても次第に精神的な負担に耐えきれなくなることは想像に難くありません。
逃げるくらいなら、債務整理をして少しでも早く生活を立て直すほうが気が楽なことは間違いありません。
弁護士や司法書士といった専門家が間に入ってくれるので、相手から脅されるような心配も無用です。
夜逃げは、借金について正しい知識をもっていない人がとる行動です。
ここまで記事を読んだのであれば、夜逃げをすることに意味がないことが理解できたはずです。
夜逃げを考えているなら、すみやかに専門家へ相談してください。